映画は時間を食うのでなるべく良質の作品が見たい。
そんな時はプレス広告よりも監督で選ぶ。
そしてなるべく映画館の大画面、大音量で見たい。
でも予算の関係でなるべく映画ファンデーもしくはレディースデイ価格で見たい。
が、
そんなこととっぱらってでも
待ちに待った映画がやっとこさ公開された。
「ぐるりのこと。」橋口監督、会心の、そして渾身の最新作。
ホントは公開されるなんて知らなくって
フツーに別の映画を見に行って最新作のコト知ったんだけどさ。
主演がリリーさんかぁ・・・なーんかビミョーだなぁ。とか思ってたのに 笑
男と女。
それだけで映画は成立する。
そして二人の関係から世界が成り立っていく。
「ぐるり」という言葉はその世界の様子を作品にしたいがために
橋口監督がプレゼンで説明した、とパンフレットの制作日誌に書いてあった。
その「ぐるり」という感覚は各個人ごとに差異があるはずで
自分以外の人に説明し、さらには企画として上げなければいけない。
「かもめ食堂」でも感じtがそのささやかな「感覚」について
心から信じれる人々が映画制作を行っているという点にとても感動した。
簡単なようでいちばん難しい。
「しあわせ」の感覚の共通感覚。
言葉では陳腐。
言葉では括れない。
それ。
それが「ぐるり」という言葉で集約された。
もちろん
「しあわせ」の「反対」も含んでいる。
*****
「ぐるりのこと。」は
劇場的でない、表現を極力抑えた内容となっている。
実は「ハッシュ!」公開時に橋口監督に質問したことがある。
「どうして人を死なせる展開なんですか」
凄くイヤな表情をされた、ように見えた。
橋口作品は監督・脚本・編集まで行っているらしい。
そんな完璧主義な監督に話の転換を決定付けるシーンに疑問を投げかけるなんて。
劇場内の空気が凍ったような感じだったなぁ・・・
6年を経ての新作。
勝手な思い込みかもしれないが
あの時、私が投げかけた質問にこの作品で答えてくれたのかもしれない。
確かに話の流れで人は死ぬ。
その死によって流れがはっきりと変わることはなかった。
むしろ
それによって二人の関係があらわになる。
悲しいが二人をつないでいた、と思っていたものが喪失したことによってである。
普通であればその場から逃げることもできた。
しかし逃げないという選択を、大げさでなく成す。
愛は寛容である。
そんな言葉を今、思い出した。
「好きだから一緒にいたい」
その言葉の本当の意味と嘘のない行動を
この映画は大げさに伝えることはない。
簡単なようで難しい。
でも橋口監督はやってのけ、作品として残してくれた。
監督のアイデンティティを超越した
本当にすべてが素晴らしく
色褪せることのない普遍さがある。
誰もが持っている心の汚さも
目をそらしたい非情な醜さも
存在している。
それでも希望という
まばゆい美しさも
全部詰まっている映画です。
是非多くの人に見て欲しいです。
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